【食品輸出のコンサルタントが解説!】商談につながる食品輸出の海外営業資料の作り方

この記事で分かること
  • 海外営業で価格競争に陥らないための「価値の再定義」の重要性
  • 海外バイヤーに伝えるべき3つの問い
  • 支援事例をもとにした具体的な考え方
  • 営業成果を最大化する3つの要素と資料構成

はじめに

「品質には自信があるのに、海外バイヤーからは“数ある日本食品の一つ”として扱われてしまう」

「展示会に出展しても、なかなか本契約につながらない」

海外展開を目指す食品メーカーから、このようなご相談を多くいただきます。

国内市場とは異なり、海外輸出では物流コストや中間マージンが発生するため、「価格が高くても選ばれる仕組み(高付加価値化)」が不可欠です。

本稿では、弊社の支援事例を交えながら、海外バイヤーの心を動かす「価値提案型」の営業資料を作るための考え方と具体的なステップを解説します。

目次
  1. 提案型営業のすすめ:こだわりや伝統を付加価値に
  2. 考えるべき3つの問い
  3. 具体的な検討事例
  4. 注意点①:営業成果=商品ニーズ×販売条件×営業力
  5. 注意点②:活用シーンとターゲットに応じてツールと内容を変える
  6. 営業資料の構成
  7. おわりに

1. 提案型営業のすすめ:こだわりや伝統を付加価値に

海外営業でよくある課題

海外営業に際して、このようなお悩みはありませんか。

  • 「品質には自信があるが、海外バイヤーからは“数ある日本食品の一つ”として比較されてしまう」
  • 「展示会に出展してさまざまな取り組みを行っているものの、なかなか取引につながらない」

国内市場では、顧客との関係性や価格競争を前提とした営業活動が中心となり、商品価値を言語化して伝える機会が少なかった企業も多いのではないでしょうか。

一方、海外輸出・販売では前提が大きく異なります。海外へ商品を輸出・販売するためには、物流費や流通マージンなどのコストを価格へ転嫁せざるを得ません。そのため、「ある程度価格が高くても、価値を感じて選んでもらえる仕組み」を構築する必要があります。

さらに、海外展開を成功させるためには、食文化の異なる市場において、その商品の何が「価値」になるのかを言語化し、的確にアピールしなければなりません。価値観やライフスタイルの異なる海外市場で、自社商品がどのような価値を持ち、どのような人から、どのように評価されるのか。これらを短期間で整理することは、決して簡単ではありません。

本稿では、弊社の支援事例を交えながら、その考え方の概要をお伝えします。皆様の海外事業、ひいては国産食品の海外市場拡大の一助となれば幸いです。なお、本稿は最終消費者が個人であることを前提に、価格競争ではなく、高付加価値化を目指す提案型営業を想定した内容です。

2. 考えるべき3つの問い

高付加価値化を実現するためには、その商品の何が価値なのかを、自社で言語化してアピールする必要があります。ただし、「価値」という言葉だけでは、具体的に何を考えればよいのか分かりにくいかもしれません。そこで、弊社が重視している要素を、次の3つの問いに整理してご紹介します。

①消費者価値:その商品を通じて、消費者が得られる価値や体験は何か?

まず考えるべきなのは、その食品を食べることで得られるメリットや、どのようにおいしいのか、何が特別なのかという点です。ここで重要なのが、一口に消費者といっても、さまざまな属性の人がいるということです。

例えば、次のようなターゲットが考えられます。

  • 健康志向のシニア層
  • 上質なひとときを楽しみたい大人
  • 家庭料理の風味にこだわるグルメ層

どのような人に、どのような価値を感じてもらえるのか。その「解像度」が高いほど、より具体的で伝わりやすいアピール材料になります。一方、普段から自社商品を見ている社内メンバーだけで検討すると、「灯台下暗し」になったり、訴求内容が海外市場のニーズとずれたりすることがあります。海外向けのブランディングとして、明確で鋭い切り口が生まれにくい場合もあるため、注意が必要です。

②バイヤー価値:その商品を取り扱うことで、販売先が得られるメリットは何か?

次に考えるべきなのは、その食品を販売・提供することで、小売店や飲食店などの販売先が得られる具体的なメリットです。

このときは、販売先の業種も考慮する必要があります。貴社の商品を販売先の顧客が購入することで、販売先にはどのようなメリットが生まれるでしょうか。商品棚に置かれたり、飲食店で提供されたりしたときに、どのような状態になることが望ましいのか。販売先の立場になってイメージしてみてください。

「バイヤーに売れたら終わり」ではありません。

自社商品が海外市場でどのような流通ルートを通り、最終的にどのような消費者へ届くのかまで想定する必要があります。

③独自価値:同業他社と比較して、「貴社の商品」でなければならない理由は何か?

同業他社との比較も欠かせません。

他社商品と比較したときの「自社ならではの価値・メリット」を言語化できなければ、価格や調達のしやすさなどを理由に、他社商品が選ばれてしまう可能性が高くなります。

自社では当たり前だと思っていることの中に、実は大きな強みが眠っている場合もあります。しかし、当事者だけでその強みを見つけ出すことが難しいケースも多く、客観的な視点を取り入れることが重要です。

3. 具体的な検討事例

ここからは、より具体的にイメージしていただくために、弊社が支援した事例をご紹介します。

高級調味料メーカーA社:支援事例

背景

A社は、手作りの伝統製法にこだわる、歴史ある高級調味料メーカーです。味と品質には自信を持っていましたが、国内市場では大手企業にシェアを奪われ続けており、海外販路に成長機会を見いだそうとしていました。一方、同様の調味料を製造するメーカーは全国に存在しています。そのため、海外事業において、自社をどのようにブランディングしていくべきか悩んでいました。

①消費者価値

世界的な日本食ブームでは、和牛、寿司、ラーメンといった分かりやすい料理のイメージが先行しています。一方で、たれや調味料の素材にまでこだわった、本格的な和食体験ができる場面は意外と多くありません。

そこで、A社の調味料を使うことで、「本物の和食体験ができる」という価値を設定しました。従来の和食体験では、調味料まで含めた価値が十分に伝わっていない点を訴求したのです。

さらに、A社商品の特徴を組み合わせ、海外市場で価格競争ではなく、独自価値で勝負できる方向性を整理しました。これにより、従来の商品説明型営業から、価値提案型営業への転換を実現しました。

②バイヤー価値

販売先である小売店や飲食店にとって、A社の商品を取り扱うことで、どのような状態になることが望ましいのかを具体化しました。そのうえで、販売先の売上や店舗オペレーションなどに貢献できる点を整理し、営業時の訴求ポイントにしました。

③独自価値

リサーチを進める過程で、A社は地理的・歴史的に、その調味料の製造に適した立地にあることが分かりました。また、製造過程で国内屈指の高品質かつ特徴的な原材料を使用していることも明らかになりました。これらの特徴を掛け合わせ、「唯一無二のストーリー」として整理することで、海外バイヤーに対して訴求すべき独自価値を明確にしました。

同様の商品を作る競合が多い分野でも、その企業の伝統や文化的な背景をひもとくことで、独自価値を明確にできます。また、海外バイヤーとの商談において、何を軸に説明すべきかも整理できます。自社では何気なく当たり前だと思っていることも、海外営業においては大きな価値になる可能性があります。

成果

今回の支援を通じて、自社および自社商品の価値を再定義し、販促ツールを整えました。その結果、展示会や営業活動において、自信を持って商談・交渉に臨めるようになり、商談獲得数と成約率の向上につながりました。

老舗菓子メーカーB社:よくある失敗例

背景

B社は、高い技術力を持つ老舗の菓子メーカーです。老舗として安定した事業基盤と過去のヒット商品を持っていましたが、近年は新商品開発がうまくいかず、海外進出にも出遅れていました。そのため、海外市場で何を訴求ポイントにするべきか悩んでいました。

①消費者価値

B社の課題は、海外展開を国内事業の延長として捉えていたことです。また、過去の成功体験がかえって足かせとなり、既存の主力商品や従来の営業手法に固執していました。商品を改めて確認すると、日本人好みの原材料を使った、昔ながらの素朴な商品が中心でした。

しかし、国内市場で高く評価されてきた商品が、海外市場でも同じ価値基準で評価されるとは限りません。社内メンバーだけでは原因を特定できず、結果が出ない期間が続いていました。

②バイヤー価値

国内では、既に関係のある取引先への販売が中心だったため、企業の知名度以外に、取引先へ具体的なメリットを訴求していませんでした。

しかし、海外市場では、老舗であることや「○○名産」といった情報だけで、継続的な事業拡大につなげることは難しい場合があります。

③独自価値

既存の営業資料にも、自社と同業他社を比較した内容はありませんでした。実際の相談現場でも、自社の強みを一言で説明できないケースは少なくありません。自社のこだわりだけではなく、市場における特徴や相対的な位置付けを把握することが重要です。同業他社を2~3社ほどピックアップし、自社ならではの強み、唯一無二の価値は何かを整理してみましょう。

4. 注意点①:営業成果=商品ニーズ×販売条件×営業力

営業は必要不可欠だが、万能ではない

海外事業において営業は必要不可欠ですが、あくまで重要な要素の一つです。海外市場に合った、ニーズのある商品でなければ、売ることは難しくなります。また、市場に合う商品であっても、価格や販売条件が合わなければ取引は成立しません。

反対に、どれほど良い商品と条件を備えていても、自社商品の価値を的確に訴求できる営業力がなければ、契約には至りません。つまり、営業成果は次の3つの要素の掛け合わせによって生まれます。

営業成果=商品ニーズ×販売条件×営業力

それぞれの項目について、海外営業でよく課題となるポイントを確認してみましょう。

商品ニーズ

「よく分からない」問題

日本人にとっては当たり前でも、海外の消費者やバイヤーから見ると、用途や価値が分かりにくい商品が少なくありません。こだわりや名産品であることばかりを強くアピールすると、かえって商品の特徴や使用方法が分かりにくくなることもあります。場合によっては、原材料からパッケージに至るまで、商品企画を抜本的に見直す必要があります。

海外での売れ行きに悩んでいる場合は、既存の取引先や海外バイヤーなどから、改めて意見をもらうことも重要です。この課題を解決できなければ、営業資料をどれだけ作り込んでも、成果につながりにくい可能性があります。

「既に間に合っている」問題

海外の主要市場では、基本的な日本食品は、既にいずれかの店舗で取り扱われている場合がほとんどです。既に取引関係や販売実績のある商品と競合した際、機械的な会社説明や商品説明だけでは、バイヤーに新たに取り扱うメリットを感じてもらえません。このような場合は、前述した「独自価値」を明確に設計し、営業時に伝える必要があります。

販売条件

販売条件には、価格、インコタームズ、ロット、支払サイトなどがあります。バイヤーごとに求められる条件は異なるため、自社のリスク許容度や交渉力に応じて、柔軟に対応する必要があります。

営業力

商品ニーズと販売条件が一定の水準を満たして、初めて営業の効果が表れます。営業資料を作成しながら、商品企画や販売条件も同時並行で見直し、顧客に「刺さる」営業活動につなげてください。

5. 注意点②:活用シーンとターゲットに応じてツールと内容を変える

誰に何を伝えるべきかは、場面によって異なる

説明資料を一つだけ作成し、すべての場面で使用している企業もあります。しかし、できれば活動するシーンとその目的に応じて、複数の資料やツールを使い分けることをおすすめします。

例えば、展示会では短時間で要点を伝え、バイヤーとの接点を作る必要があります。その後の一対一の商談では、前述したさまざまな観点から、自社商品を詳しくアピールする必要があります。また、一口に営業資料といっても、次のようにさまざまな種類があります。

  • プレゼンテーション資料
  • カタログ
  • チラシ
  • 店頭POP
  • 商品仕様書

「どのような場面で」「誰に」「何を伝えるために」「どのツールを使うのか」を改めて考えてみてください。

6. 営業資料の構成

ここまでの内容を踏まえて、営業資料の大まかな構成をご紹介します。実際には、商品や商談相手、活用する場面に応じて、内容を追加したり、順番を変更したりする必要があります。あくまで基本的な構成の目安としてご覧ください。

どのような営業ツールを作成する場合でも、次のチェックポイントを確認すれば、大きな情報の漏れを防ぐことができます。

  • 企業情報:どのような背景や理念を持つ会社なのか
  • 商品情報:その商品の特徴は何か
  • 顧客像 :どのような人が購入し、どのように消費する想定なのか
  • 独自性 :自社商品ならではの特徴や価値は何か
  • 供給体制:安定した取引や供給を継続できるか
  • 取引条件:現実的な条件で取引できるか

7. おわりに:自社の「価値」がどこにあるか、悩んでいませんか?

本稿では、「海外バイヤーに刺さる営業資料の作り方」を解説しました。

海外販売を実現するためには、日本国内では当たり前だと思っていた価値を、海外市場に合わせて再定義し、具体的に伝える必要があります。営業資料は、一朝一夕に完成するものではありません。市場やバイヤーの反応を確認しながら、商品企画や販売条件とともに継続的に改善していくことが重要です。

本稿の内容が、海外バイヤーに選ばれる営業資料を作る際の参考になれば幸いです。

自社商品の海外展開について相談してみませんか?

株式会社Tokyo Brandsでは、海外向けの営業資料やブランド設計をはじめ、市場調査、商品企画、海外バイヤーの開拓、輸出販売、現地プロモーションまで、食品事業者の海外展開を一気通貫で支援しています。

「自社商品の強みを海外向けに整理したい」「営業資料を見直したい」「海外バイヤーとの商談や販路開拓につなげたい」とお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

執筆者プロフィール

株式会社Tokyo Brands 代表取締役 福井 貴之さん

大手総合商社にて海外営業・貿易業務に従事し、大手アパレルブランドのロシア展開を担当。

その後、株式会社日本百貨店で海外マーケティングを担い、シンガポールにおける日本食品の販路開拓を推進。

経営コンサルティング会社では、消費財メーカーの戦略・商品開発支援に従事した後、株式会社Tokyo Brandsを創業。

輸出商社とコンサルティングの両面から、日本ブランドの海外展開を支援している。

※本記事は関係者への取材や発言をもとに構成したものであり、記載内容は執筆者または取材対象者の見解によるものです。農林水産省の公式見解や方針を示すものではありません。