【北米市場のプロが解説!】北米市場で「選ばれ続ける」日本食品をつくる市場調査から販路開拓まで

私どもはカナダを拠点に、日本産和牛、果物、日本酒などの北米市場展開に携わり、市場調査、販促、テスト販売、販路開拓を支援してきました。

本記事では、実際の販売現場で得た経験をもとに、日本の農林水産物・食品がどのように北米市場へ販路を広げ、継続的なビジネスへつなげられるのかをご紹介します。

日本には、世界に誇る魅力的な農林水産物・食品が数多くあります。しかし、「品質の高い商品=海外で売れる商品」とは限りません。

北米市場で継続的に選ばれるためには、市場との適合性を見極め、商品の価値を現地の消費者やバイヤーに伝わる形へ置き換え、持続的な販売体制を構築することが重要です。

そこで本記事では、市場調査、ブランディング、取引条件への対応、販路開拓まで、海外で「選ばれ続ける商品」を育てるためのポイントを、実際の支援事例を交えながらお伝えします。

目次
  1. 北米市場について
    ・アメリカ市場
    ・カナダ市場
  2. 北米市場展開が難しい5つの理由
    1.現地の消費者ニーズや売場環境を把握できていない
    2.商品の価値や高価格の理由が伝わっていない
    3.流通コストを踏まえた価格設計ができていない
    4.輸出・販売に必要な条件が整っていない
    5.継続販売につながる体制を構築できていない
  3. 市場調査
    ・テストマーケティングの事例|日本産りんごのテスト販売
  4. ブランディング・マーケティング
    ・ブランディングの事例|日本産和牛の北米市場展開
  5. 北米市場で求められる取引条件
  6. 販路開拓
    ・販路開拓の事例|日本産和牛の北米展開
  7. まとめ

1. 北米市場について

アメリカ市場

アメリカは約3億4,000万人の人口を抱える、世界最大級の消費市場です。北米市場への輸出を検討する際、多くの企業が、まずアメリカ市場を思い浮かべるのは自然なことです。

健康志向、高品質食品、オーガニック商品、サステナブルな生産背景への関心も高く、日本産食品が付加価値を訴求できる可能性があります。

一方で、規制、関税、物流、商習慣などが変化しやすく、企業にとって予測しにくい要素もあります。

さらに、アメリカは一つの均一な市場ではありません。州だけでなく、都市圏ごとに所得水準、人口構成、食文化、日本食への理解度が大きく異なります。

ニューヨークやカリフォルニアには、多文化的な背景を持つ消費者が多く、高品質な日本食品や高付加価値商品を受け入れる土壌があります。

一方、テキサスも州全体を一括りにはできません。日本食に関心を持つ消費者や、発展した飲食市場が存在するのは、ダラス、ヒューストン、オースティンなどの都市圏です。

そのため、アメリカ全体を一つの市場として捉えるのではなく、商品に合う都市、販売チャネル、消費者層を絞り込むことが重要です。

カナダ市場

カナダは人口約4,000万人と、アメリカに比べると市場規模は小さいものの、西海岸を中心にアジア系住民も多く、日本食やアジア食品への受容性が高い市場です。

近年では、日本食レストランに加え、おにぎりや手巻き寿司などの専門店も見られます。現地のスーパーマーケットにも寿司コーナーが設けられるなど、日本食は外食にとどまらず、日常の食生活にも浸透しています。

また、カナダには多様な文化的背景を持つ消費者が暮らしていることから、テストマーケティングの場としても活用できます。

実際の販売を通じて、味、価格、パッケージ、英語での商品説明などに対する消費者の反応を確認し、そこで得られたフィードバックを反映したうえで、カナダにとどまらず、アメリカをはじめとする他の海外市場への展開を検討することも可能です。

アメリカとカナダはいずれも移民国家であり、人種、宗教、食習慣が多様です。さらに、州や地域ごとに規制や商習慣も異なります。

そのため、「北米輸出」と一括りにするのではなく、現地の消費者ニーズ、競合商品、価格帯、売場環境、販売チャネルなどを調査したうえで、自社商品に適した市場や販売方法を検討することが、販路開拓の第一歩となります。

2. 北米市場展開が難しい5つの理由

日本食への関心は高まっていますが、北米市場への展開には複数の課題があります。

(1)現地の消費者ニーズや売場環境を把握できていない

日本で高く評価されている商品でも、現地消費者が好む味、容量、用途、パッケージが、日本市場と一致するとは限りません。

また、現地の需要、競合商品、売場での陳列方法、販売チャネルによって、求められる商品設計や販売方法も異なります。

(2)商品の価値や高価格の理由が伝わっていない

日本産食品は、品質や信頼性への期待から、現地では比較的高い価格で販売されることがあります。

しかし、原材料、製造方法、生産背景、品質管理など、価格の理由となる価値が消費者に伝わっていないケースも少なくありません。

より安価な他国産の類似商品と並べられた際、商品の違いや価格差の理由が理解されなければ、選ばれにくくなります。

(3)流通コストを踏まえた価格設計ができていない

日本の農林水産物・食品の輸出では、輸出・輸入事業者、卸売・小売事業者など、複数の事業者が商流に入るケースが多く見られます。

それぞれに必要な役割はありますが、手数料やマージンが積み重なると、最終的な小売価格がターゲット市場の価格帯から外れてしまうことがあります。

また、価格だけが上がり、生産者の想いや商品のストーリーが流通の途中で失われれば、消費者から「高いだけの商品」と受け取られてしまいます。

弊社が現地の輸入事業者、卸売事業者、小売店のバイヤーなどと商談を行う中でも、複数の中間事業者を介さず、よりシンプルな流通経路で商品を仕入れたいという要望が多く寄せられています。

(4)輸出・販売に必要な条件が整っていない

大手卸売事業者や高級志向の小売店では、食品安全、品質管理、持続可能性などの観点から、認証の有無が取引開始の判断材料となることがあります。

GLOBALG.A.P.、FSSC 22000、MSC、USDA Organicなど、商品カテゴリーや販売先に応じて求められる条件は異なります。

商品そのものに関心を持ってもらえても、取引条件を満たしていなければ、商談を先へ進めることはできません。

(5)継続販売につながる体制を構築できていない

一度販売できたとしても、それだけで継続的な輸出につながるとは限りません。

初回取引やイベント販売だけで終わるケースも多く、継続販売には、現地パートナーとの関係構築、販売状況の共有、消費者からのフィードバック、商品や販促方法の改善が欠かせません。

北米市場への食品輸出では、市場環境、消費者ニーズ、輸出条件、流通構造、販売後の体制まで、複数の要素を整理しながら進める必要があります。

ここからは、こうした課題を踏まえ、北米市場で継続的な販売につなげるために重要となる市場調査、ブランディング・マーケティング、取引条件、販路開拓について、実際の事例を交えながらご紹介します。

3. 市場調査

市場調査とは、単に市場規模や競合商品を調べることではありません。

商品が「どのような環境で売られ、どのように選ばれているのか」を理解し、その結果を商品設計や販売戦略へ反映することです。

テストマーケティングの事例|日本産りんごのテスト販売(2022~2023年)

北米では、りんごは長期間の保管や外観維持を目的としてワックス処理され、常温の青果売場で山積みにされることが一般的です。

一方、日本産りんごは、品種本来の風味や食感を大切にするため、ワックス処理を行わないものが多く、皮も非常に繊細です。本来であれば、その特徴を理解したうえで、冷蔵環境での販売や丁寧な陳列方法を検討する必要があります。

しかし、現地の一般的な方法と同じように山積みで陳列すると、次のような問題が発生します。

  • 表面に傷が付きやすい
  • 品質劣化が早まる
  • 消費者が本来の品質を体験できない

さらに、北米では、りんごの「蜜」が傷みや腐敗のサインと誤解される場合もあります。

日本では価値として評価される特徴が、現地では正しく理解されず、「価格が高いのに傷みやすい商品」という誤った印象につながる可能性があります。

問題は商品の品質ではありません。日本産りんごの価値を最大限に引き出す販売戦略が、現地の売場に合わせて設計されていないことにあります。

弊社では、現地の販売環境を踏まえ、次のような取り組みを実施しました。

  • 発泡スチロールではなく、現地で受け入れられやすい化粧箱パッケージを制作
  • 「蜜」や日本産りんごの特徴を説明する英語版フライヤーを制作
  • 1個10ドルのプレミアムりんごとして個別販売するための小分け袋を制作

今回は市場調査を目的とした少量・期間限定での販売でしたが、商品は完売しました。

販売数量が限定されていたことに加え、高級感のあるパッケージによって、日本産りんごの特別感やギフト性を打ち出せたことが、消費者の購入につながった要因の一つと考えられます。

このテスト販売を通じて、日本産りんごは単に「高価格なりんご」として販売するのではなく、商品の特徴や背景を伝え、パッケージや売り方を含めて付加価値を見せることが重要であると確認できました。

市場調査は、情報収集だけで終わらせるものではありません。

得られた結果をパッケージ、販促方法、販売先、価格、マーケティング施策へ反映し、市場に適した販売戦略へ落とし込んで、初めて意味を持ちます。

4. ブランディング・マーケティング

北米市場では、日本国内で評価されている価値が、そのまま伝わるとは限りません。

商品の背景、ストーリー、食文化、生産方法まで含めて説明し、価格ではなく価値で選ばれるブランドを築くことが重要です。

ブランディングの事例|日本産和牛の北米市場展開(2020~2025年)

近年、北米では「Wagyu」という言葉の認知が広がり、高級牛肉のカテゴリーとして知られるようになりました。

しかし、日本産和牛と海外産Wagyuの違いが、一般消費者に十分理解されているとはいえません。

海外では、和牛由来の血統を持つ牛や、他品種との交雑牛も「Wagyu」として販売されています。そのため、日本で生産され、厳格な個体識別・血統管理のもとで育てられた日本産和牛との違いが、一般消費者には分かりにくい場合があります。

その結果、「同じWagyuなのに、なぜ日本産和牛はこれほど高いのか」という疑問が生じます。

だからこそ、日本産和牛を販売する際には、単に「Japanese Wagyu」と表示するだけではなく、血統管理、飼育方法、肉質、地域農業との関係、食文化まで含め、その価格の背景にある価値を説明する必要があります。

弊社では、支援先企業とともに、日本産和牛を単なる高級牛肉として販売するのではなく、部位ごとの特徴、食べ方、生産背景まで伝える販売方法を設計・実行しました。

具体的には、次のような取り組みを行いました。

  • 一頭買いによる仕入れ
  • 日本の和牛職人による、希少部位を含む部位ごとのカット販売
  • 焼肉、しゃぶしゃぶ、すき焼き、ステーキ、ローストなど、用途に合わせたカットの提案
  • 端材を活用した惣菜商品の販売(和牛カレー、コロッケ、牛丼など)
  • 小売店での試食イベントの開催
  • 和牛の食べ方を紹介するレシピの制作
  • 海外産Wagyuと日本産和牛の違いや、循環型農業による飼育背景を説明する販促資料の制作

北米市場における和牛販売では、サーロインやリブロースなど、人気部位を中心に扱われることが多く、希少部位まで細かく切り分けられる専門人材も限られています。

また、牛肉は厚切りのステーキやローストとして食べられることが一般的です。

一方、日本には、和牛職人が一頭の牛を細かく部位に切り分け、焼肉、しゃぶしゃぶ、すき焼きなど、それぞれの部位や肉質の特徴に合わせた調理方法で、余すことなく活用する文化があります。

そこで、日本の和牛職人が現地で実際にカットし、弊社が希少部位を含む部位ごとの特徴や、それぞれに適した調理方法を説明しました。

これにより、サーロインやリブロースだけではない日本産和牛の多様な部位の魅力と、日本ならではの食べ方をあわせて伝えることができました。

試食イベントでは、次のような声も多く寄せられました。

「海外産Wagyuと比べて、日本産和牛は味や食感がこれほど違うとは知らなかった」

「ステーキ以外の食べ方を初めて知った」

商品を試してもらうだけでなく、海外産Wagyuとの違いや食べ方まで説明することで、価格の背景にある価値への理解にもつながりました。

また、日本産和牛には、味や肉質だけでなく、生産背景にも伝えるべき価値があります。

今回支援した日本産和牛では、米づくりを中心とした循環型農業の中で育てられていることも、海外産Wagyuとの差別化につながる要素の一つでした。

さらに、北米では赤身肉を好み、脂身を敬遠する消費者も少なくありません。そのため、霜降りを単に「脂の多い肉」として見せるのではなく、次のような点を食文化とあわせて説明しました。

  • なぜ日本では霜降りが評価されるのか
  • 和牛特有の口どけとは何か
  • 不飽和脂肪を含む脂質の特徴
  • 少量でも満足感を得られる食べ方

海外市場におけるブランディングで重要なのは、商品の特徴を並べることではありません。

商品の背景、生産者の想い、地域性、日本ならではの食文化を、現地消費者が理解し、価格にも納得できる価値へ翻訳して伝えることです。

5. 北米市場で求められる取引条件

商品の品質だけでなく、海外バイヤーが安心して取り扱える状態を整えておくことも重要です。

北米では、販売先や商品カテゴリーによって、求められる認証や管理基準が異なります。

例えば、食品の製造・加工施設ではFSSC 22000やISO 22000などの食品安全マネジメントに関する認証、農産物ではGLOBALG.A.P.、水産物ではMSC、オーガニック商品ではUSDA Organicなどが、取引条件や判断材料となる場合があります。

実際に、米国ニューヨークの高級スーパーマーケットへ日本産和牛を提案した際には、FSSC 22000の認証取得が取引条件として求められました。商品の評価自体は高かったものの、この条件を満たすことができず、商談を進めることができませんでした。

また、北米の大手青果関連企業との商談では、果物や野菜についてGLOBALG.A.P.認証が必要であると説明を受けたこともあります。

このように、どの認証が必要になるかは、商品そのものだけでなく、販売先の規模や方針、商品カテゴリーによっても異なります。

そのため、まず商品を輸出してから対応を考えるのではなく、ターゲットとする販売先がどのような認証や食品安全管理体制を求めているのかを、事前に確認しておくことが重要です。

高品質な商品を持っているだけでは、必ずしも販路が開けるとは限りません。

商品の品質やストーリーを適切に伝えることに加え、商品、製造施設、管理体制を含めて「取引できる状態」に整えておくことが、継続的な販路開拓につながります。

6. 販路開拓

販路開拓とは、商品を販売してくれる取引先を見つけることだけではありません。

商品の価値を理解し、適切な価格で消費者へ届け、市場の反応を共有しながら、商品や販売方法を継続的に改善していけるパートナーを見つけることが重要です。

また、市場環境や取引先の状況は常に変化します。

特定の販売先や一つの販売チャネルだけに依存すると、その取引先の方針変更や人員交代によって、販売全体が止まるリスクがあります。

販路開拓の事例|日本産和牛の北米展開(2020~2025年)

弊社では、和牛の北米展開において、現地サプライヤー、日本の行政、関係企業と連携しながら、販促と販売支援を行ってきました。

一方で、一つの販売チャネルへの依存度が高かったため、市場環境や取引先の変化が販売全体へ大きく影響するという課題も経験しました。

この経験から、長期的な販売を実現するためには、次のような取り組みが欠かせないと実感しました。

  • 小売、飲食店、業務用など、複数の販売チャネルを構築する
  • 現地パートナーから販売状況や消費者の反応を継続的に収集する
  • フィードバックをもとに商品や販促方法を改善する
  • 特定の担当者や一社だけに依存しない体制をつくる

行政によるトップセールス、海外フェア、レセプションにも、認知向上や商談機会の創出という大きな意義があります。

しかし、その成果は、イベント当日の来場者数や商談件数だけでは測れません。

本当に重要なのは、その商品が半年後、一年後も継続して販売されているのか、他の販路へ広がったのか、一度限りで終わった場合には何が問題だったのかを検証することです。

輸出支援の目的は、イベントを開催することではなく、継続的な商流を生み出すことです。

海外市場では、日本で完成した商品をそのまま販売するのではなく、現地市場からのフィードバックを取り入れながら、商品、価格、パッケージ、販促方法を改善し続ける柔軟さが求められます。

7. まとめ

北米市場で日本産食品を継続的に販売していくためには、単に商品を輸出するだけでは不十分です。

市場との適合性を見極め、商品の価値を現地に伝わる形へ変え、バイヤーが安心して取り扱える状態を整えたうえで、継続販売につながる販路を築くことが重要です。

海外進出は、商品を海外へ送り出して完了するものではありません。

販売後も、現地の消費者や取引先から得られる反応を取り入れながら、商品や販売方法を改善し、現地市場とともに育てていくプロジェクトです。

こうした取り組みを継続することで、一時的な販売ではなく、長期的に「価値」で選ばれる商品と販売基盤につながります。

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Valuablelink Consultingでは、カナダ・バンクーバーを拠点に、北米市場向けの輸出戦略設計、商品コンセプト・価格・ポジショニングの見直し、現地パートナーの開拓、英語マーケティング資料の作成、テスト販売、プロモーション企画などを支援しています。

「自社商品が北米市場で受け入れられるか確かめたい」「現地のバイヤーや販売パートナーを開拓したい」「単発のイベントで終わらない販路を築きたい」とお考えの方は、まずはお気軽にご相談ください。

執筆者プロフィール

Valuablelink Consulting

Valuablelink Consultingは、カナダ・メトロバンクーバーを拠点に、日本企業の北米市場進出を支援しています。

現地市場・売場の調査から、テスト販売、販促企画、バイヤーとの商談、販路開拓まで、実際の販売現場に入りながら支援を行っています。

消費者や取引先から得られるフィードバックを、商品、パッケージ、価格、販促方法、販売戦略へ反映し、継続的な販売につながる仕組みづくりをサポートしています。

※本記事は関係者への取材・発言をもとに構成したものであり、記載内容は執筆者または取材対象者の見解によるものです。農林水産省の公式見解や方針を示すものではありません。