
海外販路の開拓や輸出支援を進めたいけれど、「社内に詳しい人材がいない」、「専門スキルを持つ人を雇う余裕はない」という声は少なくありません。
そこで注目されているのが 副業人材や業務委託フリーランスの活用 です。常勤採用に比べてコストを抑えつつ、必要なスキルをピンポイントで取り込めるのが大きな特徴です。
本記事では、副業・業務委託を活用する際に「どんな業務を切り出せるのか」「どこで依頼できるのか」といった 初歩的なポイント を整理し、さらに外部人材活用がもたらす地域的な広がりや、農林水産省が推進する官民共創プロジェクト「おいしい日本、届け隊」についても紹介します。
1.副業・業務委託に切り出せる業務とは?
副業・業務委託で依頼しやすいのは、短期間で成果が見えやすく、専門性が高く、成果物が明確な業務です。正社員として常勤採用するにはコストが高すぎる領域や、社内に知見がなく学習コストが大きい部分を外部に委ねるのが効果的です。
輸出・販路開拓に関わる具体的な業務例
デザイン関連
輸出用パッケージリニューアル、多言語表示対応、海外展開に合わせたロゴ制作やブランド構築
市場調査
海外市場のニーズや競合分析、現地の消費者調査、価格帯や販路の把握
営業資料作成・改善
英語カタログやプレゼン資料の翻訳・改善、商談用ピッチ資料の多言語化
Webマーケティング
SNS運用(Instagram、TikTok等)、Google広告やMeta広告の設定・運用、海外向けSEO対策
越境EC出品サポート
AmazonやShopifyなどへの商品登録、商品説明文の翻訳・ローカライズ、レビュー対応
貿易実務補助
インボイス作成、原産地証明の取得サポート、輸出入規制のリサーチ、ISO・FSSC等の認証対応
これらの業務は、社内に知見が不足している部分を外部人材が補うことで実現できるものです。
また、 営業スキルを活かした海外展開支援 は、副業人材が即戦力として力を発揮できる領域のひとつです。
詳しくは関連記事 【営業スキルを副業で活かす】地方企業の輸出支援と海外展開を支える新しい働き方で解説しています。

正社員採用と副業・業務委託の違い
副業や業務委託を検討するときに多くの企業が悩むのが、「正社員として採用すべきか、それとも外部人材に依頼すべきか」という判断です。
正社員は社内に長期的にノウハウを蓄積できる一方で、採用コストや固定費が大きな負担となります。対して、副業や業務委託は短期・スポットで専門スキルを取り入れやすい反面、外部依存度が高くなるリスクもあります。
そこで、両者の特徴を整理した比較表を以下にまとめました。
| 項目 | 正社員採用 | 副業・業務委託 |
|---|---|---|
| 法律上の扱い | 会社に雇われた労働者 | 個人事業主(フリーランス) |
| 指揮命令 | 会社の指示命令に従う義務がある | 原則なし(業務内容に基づく契約) |
| 働く時間・場所 | 特定の時間・場所での勤務が多い | 基本的に自由 |
| 報酬・給与の出し方 | 毎月の固定給(時間や日数に応じて支給) | 請負・委任・準委任(成果物や業務遂行に対する報酬) |
| 社会保険 | 会社が一部負担(健康保険・厚生年金・雇用保険など) | 原則、自己負担(国保・国民年金に加入) |
| 福利厚生 | 有給・育休など、会社規定により適用あり | 原則なし |
| 契約の柔軟さ | 雇用継続が前提 | 契約内容を調整しやすい |
| 安定性 | 原則、長期雇用が前提 | 契約期間が終われば終了 |
| 専門性 | 総合的に育成・長期的にノウハウ蓄積 | 特定領域に強い専門スキルをすぐに導入できる |
| リスク | 採用ミスマッチが起きても解雇は難しい | トライアルや短期契約で相性を確認できる |
【出展】Workship「業務委託と正社員、どっちがいい?両者のメリットや正社員登用のステップまで解説」を一部編集
2. 副業・業務委託を依頼する方法
外部人材を活用する際に重要なのは、「いきなり大きな仕事を丸投げしないこと」 です。
正社員採用とは異なり、副業・業務委託では短期間・限られたリソースの中で成果を出すことが求められます。そのため、依頼する業務や成果物を明確にし、段階を踏んで進めることで、ミスマッチやトラブルを防ぎやすくなります。
外部人材に依頼するときは、以下の流れが基本です。
- 「市場調査レポート10ページ」「商品ページの翻訳と登録」など、依頼内容を具体的にする
- 曖昧な依頼は成果物の質や納期に影響する
- 平日夜や週末に稼働、月10〜30時間程度など時間を決める
- 成果物ベース(納品物や期間を区切る)で契約
- 時間単価制:時給×月の稼働時間で報酬が発生
- プロジェクト単価制:「レポート作成〇〇万円」「デザイン作成〇〇万円」など納品物に応じて設定
- まずは1〜3か月のトライアル契約で実際の進め方や相性を確認
- 定例ミーティングを設け、進捗や課題を共有
ポイントとしてまとめると、
- いきなり丸投げしない:小規模から始めて関係性を作る
- 進め方を共有する:SlackやZoomなどの連絡手段・頻度を合意しておく
- 依頼の目的を明確化:「なぜこの仕事を外部にお願いするのか」を社内でも共有しておく
これらの項目を意識した上で依頼をすることが重要となります。
3. 外部人材活用がもたらす広がり
副業・業務委託の活用は、単に不足を埋め合わせるための施策ではなく、企業の成長と地域全体の発展を同時に後押しする戦略的な取り組みです。輸出や販路開拓が進むことで、新たな顧客層の獲得や収益増加にとどまらず、地域ブランドの強化、雇用の創出、次世代への産業継承など、多方面に波及効果をもたらします。
農林水産省の調査によれば、日本の農林水産物・食品の輸出額は2024年には1.5兆円を初めて突破しました。こうした成長市場を取り込むことは、個社の利益拡大に加えて、地域全体の持続的な発展につながります。
さらに、輸出を通じて得られる国際基準への対応や品質管理の高度化は、国内市場での競争力強化にもつながります。たとえば、ISO・FSSC等の認証取得や海外規制に対応した取り組みは、国内消費者に対しても「安全・安心」の証明となり、結果的に国内販売の拡大にも寄与します。また、海外バイヤーや現地消費者から得られるフィードバックは、新商品開発や既存商品の改善に直結し、グローバルな視点を取り込んだイノベーションを促す契機となります。
つまり、外部人材の参画による輸出支援は「足りない部分を埋める」ことにとどまらず、企業・地域・産業を新たなステージへと押し上げる成長ドライバーとなり得るのです。
この観点をさらに深掘りした内容は、別記事 【輸出支援と地方創生】外部人材の活用がもたらす新しい成長戦略とは
で解説しています。

4. 人材を探す主なプラットフォーム
副業・業務委託人材を活用するには、「どこで人材を探すか」を決める必要があります。
一口にプラットフォームといっても、それぞれ得意分野や登録人材の特徴が異なります。
ここでは代表的な3つのタイプを取り上げ、それぞれのメリット・デメリットを整理しました。
| 種類 | 例 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 副業マッチングサービス | サンカク(リクルート)、lotsful(パーソル)、クラウドリンクス など | ・副業希望者が多く集まりやすい ・大手企業出身者や即戦力層も多い | ・輸出や海外販路に特化した人材は比較的少ない |
| クラウドワーカーマッチングサービス | ランサーズ、クラウドワークス など | ・案件数・人材数が豊富 ・短期・小規模案件に強い | ・スキルの個人差が大きい ・輸出支援の専門領域ではマッチングに時間がかかることも |
| 官民共創プラットフォーム | 農林水産省「おいしい日本、届け隊」 | ・輸出支援に興味のある、専門人材や、異業種人材とつながれる ・官民共創プロジェクトなので安心感がある | ・一般の大手マッチングサービスと比べると、登録人材の絶対数はまだ少なめ ・マッチング後の契約条件や進め方は各企業と人材の合意に委ねられるため、社内で受け入れ体制を整える必要がある |
「おいしい日本、届け隊」では、営業・海外営業・マーケティング・貿易実務など、輸出に直結するスキルを持った副業・業務委託人材と無料でマッチングできます。
まずは登録して、自社に合った人材との出会いを始めてみませんか?
5.「おいしい日本、届け隊」官民共創プロジェクトのご案内
地方企業にとって輸出は成長のチャンスであり、人材活用はその鍵です。
農林水産省の 「おいしい日本、届け隊」 は、企業と副業・専門人材をマッチングし、輸出支援を通じて地方創生を支援しています。
参加するメリット
- 専門スキルの即戦力活用
海外展開に必要な知見(販路開拓・規制対応・翻訳・ブランディング等)を外部人材から短期・部分的に獲得可能。 - コストを抑えた柔軟な活用
フルタイム採用に比べ、必要な時に必要な分だけ人材を確保できるため、リスクを抑えて輸出をスタートできます。 - 共創による成長戦略
人材活用と輸出支援を一体化することで、地方企業の「輸出=地域の成長エンジン」として機能。ブランド力強化や雇用創出にもつながります。
「おいしい日本、届け隊」への登録は無料です。
輸出に挑戦したい地方企業の方、副業やプロ人材として参画したい方は、ぜひ以下よりご登録ください。
※本記事は関係者の取材・発言をもとに構成されたものであり、記載内容は執筆者または取材対象者の見解によるものです。農林水産省の公式見解や方針を示すものではありません。
