
人口1億人を超え、中間所得層・富裕層の拡大とともに、日本食品への関心が高まるベトナム。一方、展示会で好評を得ても、その後の商談や継続的な注文につながらず、販路開拓に課題を抱える事業者は少なくありません。
ベトナム市場で選ばれ続けるために必要なのは、商品の品質だけではなく、現地の味覚や食文化に合わせた提案と、実際に「食べる」「買う」体験をつくることです。
本記事では、30年以上にわたり日本とベトナムをつなぎ、食品製造、外食、流通、小売、貿易などを幅広く手掛けてきたロータスグループの知見と実践事例をもとに、ベトナム市場の特性と、展示会で生まれた接点を継続的な販路へ育てるためのポイントを解説します。
- 導入:手塩にかけた自慢の商品を、海外の食卓へ届けるために
- 課題提示:展示会で生まれた「熱量」を、どうやって継続的な「購買・定着」へ繋げるか?
2-1. 展示会が持つ「認知拡大」の価値と、その次に求められる「深掘り」のアプローチ
2-2. 現地バイヤー・消費者が直面する「2つの心理的な壁」
2-3. 単品試食から一歩進んだ「料理(メニュー)としての使用価値」の提示へ - 解決策:1億人のベトナム市場を攻略する「3つの成功戦略」
3-1. 戦略①:ベトナム向けブランド設計(価格・ストーリー・パッケージ)
3-2. 戦略②:徹底した現地化・ローカライズ(味覚と食文化への適応)
3-3. 戦略③:飲食×小売の「ハイブリッド戦略」 - 事例紹介:シェフの創造力がビジネスを拓く「ロータスフェア」の成功フレームワーク
4-1. 「徳島ロータスフェア」の実践に見る、地域食材が現地市場を動かす仕組み - まとめ:その一皿が、ハノイ・ホーチミンの市場を動かす。
1. 導入:手塩にかけた自慢の商品を、海外の食卓へ届けるために

「日本が世界に誇る最高の食材を、海外の食卓へ届けたい」
「こだわりの技術と情熱が詰まった自社商品を、成長著しい海外市場で勝負させたい」
食品メーカーの経営者や海外事業の担当者、地域の農林水産品を世界へ発信しようと奔走する自治体の担当者であれば、一度はこうした想いを胸に、海外市場への販路開拓を思い描いたことがあるのではないでしょうか。
その有力なターゲットの一つとして、現在注目されているのがベトナム市場です。
ベトナムは人口1億人を超える大規模な市場であり、若い世代を中心に活気に満ちています。近年は目覚ましい経済成長を背景に、中間所得層や富裕層が拡大し、日々の食に対する支出や、高品質な輸入食品への購買意欲も高まっています。
さらに見逃せないのが、日本食を取り巻く外食・小売市場の成長です。現地には日系の外食チェーンや高級和食レストラン、日系スーパーマーケットなどが進出・定着し、ベトナムの生活者にとって、日本食は次第に身近な存在となっています。
一方で、ベトナム市場への販路開拓を考えるうえでは、忘れてはならない重要な視点があります。
それは、「日本で売れている高品質な商品だからといって、そのまま持ち込めば売れるわけではない」ということです。
現地の市場構造や消費者のライフスタイル、味覚、食文化、商習慣に合わせたアプローチがなければ、展示会で高い評価を得たとしても、継続的な取引や購買にはつながりません。運よく商品が店頭に並んでも、十分に価値や使い方が伝わらなければ、棚に置かれたまま、ビジネスが一過性で終わってしまう可能性があります。
では、展示会などで現地のバイヤーと出会い、「素晴らしい商品だ」という評価を得た後、その関心をどのようにして確かな販路と継続的な注文へ育てていけばよいのでしょうか。
本記事では、ベトナム市場の特性をひもときながら、日本食品が現地で選ばれ、継続的に購入されるために必要な考え方と、展示会で生まれた接点を販路開拓・市場定着につなげるための具体的なポイントを解説します。
2. 課題提示:展示会で生まれた「熱量」を、どうやって継続的な「購買・定着」へつなげるか?
2-1. 展示会が持つ「認知拡大」の価値と、その次に求められる「深掘り」のアプローチ

海外展開において、大型食品展示会や「ジャパンフェア」への出展は、重要な第一歩です。一度に多くの現地バイヤーや業界関係者と出会い、自社商品の存在を広く知ってもらう「面での認知獲得」において、展示会は非常に有効な施策です。
一方、ハノイやホーチミンの市場は急速に成熟しています。主要なホテルやレストランのシェフ、大手小売事業者のバイヤーは、日々、世界中の企業から数多くの提案を受けています。
そのような状況で、展示会における「素晴らしい商品ですね」という第一印象を、実際の店舗採用や継続的な発注へつなげることは簡単ではありません。
「自店のグランドメニューに採用し、毎月一定量を発注する」という具体的な意思決定へつなげるためには、展示会とは異なるアプローチで、商品を深く知ってもらう「検証と体験の場」が必要です。
2-2. 現地バイヤー・消費者が直面する「2つの心理的な壁」

展示会で話題となり、商品が現地の店頭やメニューに並んだ後、消費者の日常的な購入へ定着するまでには、越えなければならない「2つの心理的な壁」があります。
1. 使い方が分からない
- どのように調理すればよいのか分からない
- 自国の家庭料理にどのように合わせればよいのか分からない
2. 味の想像がつかない
- 見たことのない調味料、食材、飲料である
- 高い価格を払って、購入に失敗したくない
ベトナムの生活者にとって、日本の伝統的な調味料や地域特有の柑橘果汁、だし製品などは、「名前は知っていて興味はあるものの、普段の食生活にどう取り入れればよいのかイメージできない商品」になりがちです。
使い方が分からなければ、味も想像できません。
だからこそ、興味や関心を持ってもらうだけでなく、「こう使えば、こんなにおいしくなる」という具体的な食体験を提供する必要があります。
2-3. 単品試食から一歩進んだ「料理としての使用価値」の提示へ

展示会のブースで行うパンフレットの配布や、小皿での単品試食は、商品の基本的な味や品質の高さを短時間で伝えるうえで、非常に効率的な方法です。
その効果をさらに確かなものにするためには、「料理として完成したときに、どれほどおいしくなり、どのような感動を生み出すのか」という使用価値を体験してもらうアプローチを組み合わせることが有効です。
醤油や調味料、食材そのものを味わってもらうだけでなく、プロの料理として提供されたときの一皿の完成度や、厨房での作業性向上、ロス削減といったオペレーション面のメリットまで具体的に示します。
それにより、バイヤーは、自社の店舗やメニューへ導入した後の姿を明確にイメージできるようになります。

3. 解決策:1億人のベトナム市場を攻略する「3つの成功戦略」

ベトナム市場で自社ブランドを浸透させるためには、現地の人々の食生活やビジネス習慣に寄り添った、丁寧なアプローチが求められます。
ベトナムで製造、外食、流通、小売、貿易を包括的に手掛けるロータスグループは、継続的な販路を築くための考え方として、次の3つの戦略を提唱しています。
ロータスグループが提唱する3つの成功戦略
①ブランド設計
ベトナムの所得層や購買力に合わせて、価格、商品のストーリー、パッケージを再設計する。
②徹底した現地化
ベトナム人の味覚や食文化に合わせて、メニューや味を調整する。
③ハイブリッド戦略
飲食店での「体験」と小売店での「購買」を組み合わせ、家庭での継続的な利用へつなげる。

3-1. 戦略①:ベトナム向けブランド設計
ベトナムでは中間所得層・富裕層が拡大しており、今後、高所得層の割合も伸びていくと予測されています。
そこで重要になるのが、現地市場の購買力に合わせた適正な価格帯の設定です。
同時に、「なぜこの価格なのか」「この食材にはどのような歴史やこだわりがあるのか」を分かりやすく伝える必要があります。
商品の背景にある価値を、現地のバイヤーや生活者の心に響くストーリーとパッケージデザインへ落とし込むことが、長く愛されるブランドをつくるための第一歩です。
3-2. 戦略②:徹底した現地化・ローカライズ
日本の商品が持つ高い品質やアイデンティティを守りながら、ベトナム人の味覚や、現地の食文化・ライフスタイルに根ざした提案を行うことも重要です。
例えば、丸亀製麺はベトナム進出に際して、現地で親しまれているフォーを意識して麺を平たくし、コシを抑えたほか、だしを甘めに調整し、トッピングにパクチーを加えるなど、現地の味覚に合わせた工夫を行いました。
こうした現地化を重ねることにより、ベトナムの生活者に受け入れられ、現地市場への定着につながっています。
ベトナムで事業を伸ばしている日系外食・食品企業も、現地の人々が日常的に「おいしい」と感じられるメニュー開発や味の調整を重ねることで、文化の壁を越えて市場に受け入れられています。

3-3. 戦略③:飲食×小売の「ハイブリッド戦略」
認知を購買へ結びつける有効なアプローチの一つが、飲食店での体験と、小売店での購買を一体化させた「ハイブリッド戦略」です。
この戦略では、消費者やバイヤーを次のような循環へ導きます。
STEP 1 レストランで体験する
プロのシェフが手掛けた料理として商品を味わい、「おいしい」と実感するとともに、具体的な使い方を理解します。
STEP 2 併設ショップや小売店で購入する
レストランで味わった感動や興味が残っているうちに、併設ショップや特設コーナーで商品を購入します。
STEP 3 家庭での利用へ定着させる
自宅で料理を再現することにより、商品やブランドのファンとなり、日常的な購買習慣やリピート購入へつなげます。
展示会などで高まった認知や興味を、このサイクルへつなげることで、単発の話題にとどまらない、継続的なファン形成が期待できます。
4. 事例紹介:シェフの創造力がビジネスを拓く「ロータスフェア」
展示会で生まれた認知を、店舗での商品採用や家庭での利用へ発展させる仕組みとして、ロータスグループが実施しているのが「ロータスフェア」です。
ロータスフェアは、「BtoB体験型商談イベント」と「BtoCレストラン&リテールフェア」を組み合わせた、展示会との相乗効果を生み出すハイブリッド型のプロモーションです。
ロータスフェアの全体構造

BtoBプロモーション
- BtoBプロモーション
- 対象:決裁権を持つキーパーソン
- 内容:シェフによるコース料理を通じて、商品の価値を五感で伝える体験型商談

BtoCプロモーション
- BtoCプロモーション
- 対象:現地の消費者、中間所得層、富裕層
- 会場:高級レストランおよび併設ショップ
- 内容:特別メニューの提供と、店頭・お土産商品の販売
4-1. 「徳島フェア」の実践に見る、地域食材が現地市場を動かす仕組み


「徳島フェア」でも、BtoBとBtoCを組み合わせたハイブリッド型の取り組みが行われました。
徳島県の「すだち果汁」「阿波尾鶏」「半田そうめん」「柚子調味料」「梅酒」などの食材を、ホーチミンの超高層ビル「ランドマーク81」内にある高級和食店「Tenku」のエグゼクティブシェフがプロデュースしました。
食材のストーリーを紡ぐコース構成
アミューズからデザートまで、すべての皿に徳島食材の魅力を取り入れ、五感で楽しめるコース料理として提供しました。
BtoBでの具体的な引き合い
来場したホテルやレストランのシェフ、バイヤーからは、「厨房で扱いやすく、品質も安定している」といった実用面での評価が寄せられ、具体的な導入検討へつながりました。
BtoCで得られた手応え
フェア期間中には、コース料理を楽しんだ中間所得層・富裕層の来店客が、併設コーナーで商品や限定セットを購入しました。料理としての体験と商品の購入を組み合わせることで、現地におけるファン形成につなげました。
展示会で得た「認知」をきっかけに、シェフの創造力を介した「体験」を提供し、外食と小売の両方からアプローチする。
これが、地域食材の価値を引き出し、現地市場への定着につなげる一つの方法です。
5. まとめ:その一皿が、ハノイ・ホーチミンの市場を動かす

展示会で得られる出会いや好感触を一過性のものにせず、確実に「店舗での採用」や「家庭での日常的な利用」へつなげていくことが重要です。
ベトナム市場で継続的な販路を築くためには、次の視点が欠かせません。
現地消費者の生活習慣に根ざす
単なる輸入商品として販売するのではなく、現地の日常の食卓やライフスタイルに自然に溶け込むための工夫が必要です。
BtoBとBtoCの両輪で展開する
小売店や飲食店などの業務用販路と、家庭向けの消費者販路を同時に育てることで、持続的な市場浸透につながります。
継続的なプロモーションと体験機会を提供する
試食イベントやフェアを通じて商品の価値を体験してもらうことで、消費者の記憶に残り、その後の購買行動につながります。
現地パートナーとの信頼関係を構築する
卸売事業者、小売事業者、飲食店などとの協働を深め、安定した供給体制を整えることが、長期的な販路形成の鍵となります。
データと現場の声を生かす
消費者の反応や販売データを分析し、商品改良や販促戦略へ反映させることで、継続的な成長につなげられます。
自社が育て上げた商品を、ハノイやホーチミンの市場で輝き続け、現地の飲食店や家庭から愛される存在にするためには、「一度の出会いを、継続的な関係へ育てる」という視点が不可欠です。
展示会を一つの起点として、その後の体験、購買、継続利用までを設計することが、ベトナム市場における長期的な販路開拓につながります。
ベトナム市場への展開を相談してみませんか?
ロータスグループでは、ベトナム市場への進出を検討する事業者に対し、市場調査、商品・メニューのローカライズ、テスト販売、ブランディング、販路開拓、輸出入・物流まで、現地で一貫した支援を行っています。
「自社商品がベトナム市場に合うか確かめたい」「展示会で得た接点を継続的な取引につなげたい」「現地で販売・プロモーションを実施したい」とお考えの方は、まずはお気軽にご相談ください。


LOTUS FOOD GROUP JOINT STOCK COMPANY(ロータスグループ)
1996年の設立以来、ベトナム市場において、日本企業の進出、食品製造、流通・販売、飲食店展開などを幅広く手掛けてきたロータスグループ。食品工場、レストラン、物流・倉庫、販売チャネルなどの現地基盤を生かし、日本企業のベトナム展開を一貫して支援しています。
代表のレ・バン・メイは、農林水産省から「日本食普及の親善大使」に任命され、30年以上にわたって日本とベトナムの懸け橋として活動。現地市場に精通したチームが、市場調査や戦略策定にとどまらず、ローカライズ、テスト販売、販路開拓、プロモーション、物流、法務など、実行段階まで伴走しています。
※本記事は関係者の取材・発言をもとに構成されたものであり、記載内容は執筆者または取材対象者の見解によるものです。農林水産省の公式見解や方針を示すものではありません。